沙美の一言に、昨日終礼で担任が口にした言葉を思い出す。

そうだ、今日先生休みなんだった……!


「お、その声は遠藤か」

「そうだよー」

「今日遅いな。道理でお前の声聞こえねーなと思ってた」

「あはは、今日はちょっと寝坊しちゃったの。そしたら明日香の説教現場に遭遇しちゃって」

「あー、なるほどな。中々強烈だよなぁ、説教現場」

「説教現場言うな!」


何よ、ふたりして!

どうせ私は怒られっぱなしの女ですよーだ!


「……あ、呼ばれたから俺、行くわ。早く来いよー」


ひらひらと窓の外に手を振って、土屋は姿を消す。

それを確認した沙美は、私に耳打ちをした。


「あの距離でも、明日香だけは認識出来るんだね」




チャイムが鳴るギリギリに教室に足を踏み入れた私は、額に汗を浮かべながら教卓の真ん前にある自分の席に着いた。

椅子を引いたのと同時に、隣から声がかかる。


「間に合ったじゃん」

「おかげでヘトヘトだけどね」

「運動不足だな」


はは、と笑いつつ、体ごとこちらに向ける土屋。

他人事だと思って……。