たとえば呼吸をするように

この手で、土屋は何度ボールに触れてきたんだろう。夢を追ってきたんだろう。

その夢の見つけ方を、私は知らないよ。




朝礼が始まり、案の定繰り広げられた進路についての話も、土屋のおかげで落ち着いて聞くことが出来た。

そんな朝礼も終わり1時間目の準備を、と思った時、先生に呼ばれ廊下へと連れ出された土屋。

どうしたんだろう、と疑問には思いつつも、すぐに戻ってきたので、何も聞かずにいた。




沈んでいた気分も、お昼にもなれば元通り。


「アヒルの鳴き声、知ってる?」

「グァッとかそんなんでしょ」

「ンガワッ、だよ」

「それ、あんたのさじ加減でしょ……」


お弁当を机に広げながら、沙美とくだらない話に花を咲かせる。

沙美の向こうに見えるのは、友達と盛り上がりながらパンを頬張る土屋。


「だって本当にそう聞こえるんだもん。気になって調べたら、知恵袋でもそういう風に聞こえてる人いたよ」

「一々調べるところがすごいわ、あんた」


呆れたように息を吐いてから、沙美は右手で持つお箸で器用に摘んだトマトを口に運ぶ。