「何かあったの?」 「別になにも」 不思議そうに首を傾げる弥生から視線をそらして、皐月は何食わぬ顔で湯気の立つマグカップに口をつける。 「でも、しんやくんの頬っぺたが真っ赤よ?さっきは、そんなに赤くなかったと思うけど」 「こいつはいつもこんな感じ」 「んなわけあるか!」 ズズズーっとわざとらしく音を立てて紅茶を啜り、慎也の声を遮る。 シュークリームの甘さに支配されていた口内に、ストレートティーのすっきりとした味わいが流れ込んで来て、堪らず“ふう…”と声が漏れる。