皐月が作った、ハムエッグとトーストの朝食を、パジャマのままで、もそもそと平らげる。
誰もいない部屋の中では、コップを置く音でさえ大きく響く。
食べ終えた食器を下げることもせず、ただぼんやりと椅子に座っていた。
事故のあとは、とても目まぐるしかった。
何時も通りの日常がすっかり変わって、全てが新しくなったような気がするほどに。
しばらく立ってから母に聞いたところによると、どうやら通りすがりの女性が、迫り来る車から助けてくれたらしい。
飛びつくようにして小さな体を抱きかかえ、守るように全身で包んでくれていたと母は言っていた…おかげで、ほんのカスリ傷程度で済んだのだと。
その人は少し頭を打ったらしく、そのあと別の病院に運ばれたと聞いたが…そのあとのことは何も知らされていない。
名前も知らないその人が、体を張って庇ってくれた…最後に見たあの笑顔も、きっとその人のものだ。



