それからしばらくして、検査も特に異常はなく、経過も良好という事で、無事に退院することができた。
住み慣れた家に帰ってみれば、父や母の態度がまるで変わっていて、少し戸惑った。
「弥生、今までほったらかしにしててごめんね。お姉ちゃんって言っても、弥生だってまだ子供なのに…私達、皐月にかかりっきりで」
「父さんも、あんまりかまってやれなくてごめんな」
驚く程柔らかく、包み込むように抱きしめられた。
ベビーベッドですやすやと寝息を立てる皐月の前で、父と母の両方から抱きしめられる。
顔を上げれば、二つの笑顔が並んでいた。
泣き出しそうに歪んでいて、それでもどこか嬉しそうな笑顔がそこにあった。
強ばっていた体から少しずつ力が抜けていくと、今まで寝ていたはずの皐月が、突然声を上げて笑った。
その突然の笑い声に驚いたように、両親が同時に顔を上げて、ベッドを振り返る。
その様子に、自然と口角が上がっていく。
何だか、随分と久しぶりに笑ったような気がした…。
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