「どうにかお母さんに好かれたくて、弟が考え出したのが、きみと同じ…いつでも笑顔でいること。言われたことをきちんとやって、お利口さんにニコニコ笑っていれば、怒られることもなかった」
“きみと同じ”その言葉が、妙に胸に響く。
「自分の気持ち押し殺して、嘘みたいな笑顔貼り付けて…そんな弟をね、見ていられなかったの。…このままじゃいけないって思った。このままだと、いつか壊れてしまうって」
妹が生まれる前は、よく家族で旅行に行ったり、近場に遊びに行ったりもした。
あの頃はまだ…両親の瞳に、しっかりと自分の姿が映っていた。
「壊れる前に、助けてあげたいと思ったの。怒ったり、泣いたり、喜んだりして…心のままに、過ごしてほしかった」
その人は、ピンっと立てた指で自分の胸の辺りを指し示した。
「心がね、平和になると、自然と笑顔もあふれるの。そうしたら、不思議と幸せも集まってくるのよ」
にっこり笑ったその人が、今度はその指をスッとこちらに向けてくる。
指されたのは、やはり胸の辺りだった。
「キミの心にも、いつか平和が訪れますように」
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