姉妹ものがたり



「なるほどね。その今まで押さえ込んできた気持ちを、菜穂にぶちまけて発散しに来た訳か」


そう言って、訳知り顔で頷く棗を、怒りを込めて睨みつける。
そんな風に、簡単に片付けて欲しくなかった。

沸々と湧き上がる怒りが抑えきれずに、ムッと唇を尖らせていると、大きな手の平がそっと頭に触れ、そのまま優しく撫でられた。

予期していなかったその行為に、思わず目を見開いたまま固まる。


「よくわかったよ。やっぱり二人は姉妹だね」


ポンっと頭に乗った手の平からじんわりした温かさと、ほのかな小麦の香りが漂ってくる。
本当はすごく不本意なはずなのに…なぜだか不思議と安心してしまうその感覚に、少しだけ浸ってみた。


「確かに、小学校の時はよく笑う明るい子だったのに、中学に上がってしばらくしたら人が変わったみたいに大人びた感じになっちゃって…笑ってるのに、どっか嘘くさかったりしたけど、それでも毎日笑顔でいられたのは、皐月ちゃんのおかげだって言ってたよ」