「喧嘩しておやつを取り合ったり、一緒にお風呂に入ってのぼせるまでお喋りしたり、同じ布団で押し合いっこしながら眠ったり…。そういう姉妹っぽい事、お姉ちゃんとしたい」
喧嘩する以前に、おやつはいつも弥生が譲ってくれたし、お風呂は学校から帰ってすぐ入る為、そもそもタイミングが合わず、そのあとはひたすら勉強に明け暮れていたので、就寝時間が被ることもほとんどない。
気がつけば、弥生の顔には、ひたすら人あたりのいい、不自然な笑顔が浮かぶようになっていた。
物心つくようになってからの記憶の中の弥生には、そんな笑顔しかなかった。
「もしかして、家を出て一人暮らしするって言いだしたのも、あたしが原因なのかなって…。あたしと一緒にいるのが、苦しくて耐えられなくなっちゃったのかなって……」
いつだって、自分の真っ直ぐすぎる思いが、弥生を傷つけているような気がしてならない。
強すぎる思いが、弥生にはずっと負担だったのではないかと思えてならなかった。
それでも、しつこい程に弥生の元に通いつめるのは、知らないうちに、姉がどんどん遠く離れていくような気がして怖かったから…。
一頻り語った所で、オレンジジュースをグイっと煽って一息入れる。



