姉妹ものがたり



「”天才”なんて言われるたびに、お姉ちゃんが苦しそうに笑ってたのは知ってた。あたしが対抗心を燃やすたびに、悲しそうに目を伏せるのも、そのあと、思い出したようにぎこちなく笑ってるのも全部知ってた。
お姉ちゃんは、あたしの為に頑張ってくれてる。あたしの憧れを裏切らないために、ずっと目標で居続けてくれようとしてる。昔は、それが当たり前だったから…何とも思わなかった。でも今は、それが苦しいの…!お姉ちゃんが、あたしのせいで笑えなくなっていくのが辛いの!」


嘘くさい笑顔を貼り付けてでも、無理して笑って欲しい訳じゃない。
弥生には、もっと自然体でいて欲しかった。


「もう、変に気を使ったり、必要以上に頑張って欲しくない。お姉ちゃんは何もしなくたって、例え天才じゃなくたって、あたしにとっては憧れだし…目標だから」


感情のままに溢れ出す言葉を、棗はただ黙って聞いてくれている。

無駄な口は挟まずに、静かに耳を傾けてくれるその姿に、今まで溜め込んできたのもが一挙に溢れ出して来るのを感じた。