姉妹ものがたり



「好きなもの食べてる時の幸せそうなその顔。弥生ちゃんも、これが見たくて毎日頑張ってるんだなって思ってさ」


棗の言葉に、不意にズキンと胸が痛んだ。
それは、ほんの些細な痛み…けれど、一度痛み出すと中々消えない痛み。


「別に…頑張ってほしくなんかない」


ポロっと溢れ落ちた言葉に、棗が首を傾げる。
それ以上言うつもりなんてなかったのに、自然と言葉が口をついて出てしまう。


「スポーツ万能で、勉強もいっつも一番で、なんでもすぐ完璧にできちゃうから、皆から天才だねなんて言われて…そんなお姉ちゃんが、ずっと憧れだった。
あたしもあんなふうになりたいって思って、勉強も運動も習い事も、一生懸命頑張った…でも、どうやってもお姉ちゃんには届かなくて、でもそれが悔しいから、次こそはっ!てまた頑張る……あたしにとってお姉ちゃんは、憧れであり、目標なの」


いつの間にか継ぎ足されたオレンジジュースが、コップの中でゆらりと揺れる。
何のしがらみもなく過ごせていた幼い頃は、弥生も今よりずっと自然に笑っていた。