姉妹ものがたり


得意げな棗を無視して夢中でパンにかぶりつく。
粗めに潰されたイチゴがゴロっとジャムの中に入っていて、悔しいかなとても好きな味だった。
中のジャムが甘い為、外側のフレンチトーストの甘さを抑えてあるところがまたなんとも言えずにくい。


「なんか飲む?昨日菜穂が買ってきたオレンジジュースしかないけど」


そう言って、棗がコップを手に戻ってくるまでの間に、ぺろっとサンドイッチを平らげてしまう。

オレンジジュースも勧められるままに飲み干して、ホッと一息ついていると、作業台を挟んだ向かい側から棗の嬉しそうな視線を感じた。


「なんですか」


あまりの美味しさに、不覚にも物凄い勢いで完食してしまったことが今更恥ずかしくなり、咄嗟にぶっきらぼうな声が出る。


「いや、なんかさ、弥生ちゃんの気持ちがわかるなーって思って」


そう言ってニコニコ笑う棗の真意が分からずに、怪訝な顔を作る。