「まあなんでもいいけど。とりあえず、進学する気があるんだったら、今から死ぬ気で勉強することだね」
木田がストローを吸い上げると、ズコーっと盛大な音が鳴る。
中身のなくなったカップをしばらく揺らして空であることを確認すると、そのまま鞄を手に立ち上がる。
「あっ、ちょっと木田さん!」
そんな木田に、すがりつくように手を伸ばすと、咄嗟にパッと払いのけられた。
「同じ年上好き同士なんですから、助けてくださいよー」
それでもめげずに声を上げると、スッと木田の目が細められる。
「言っておくけど、ぼくは年上好きなんじゃなくて、たまたま好きになった人が年上だっただけだから。それから、学校見学の時に、校内案内してあげただけなのに馴れ馴れしい」
「そんなー木田さん冷たいですよ!」
淡々と紡がれる木田の言葉に、わざとらしく悲しげな声を上げる。
「あとこれ一番大事なことだけど、ぼくは一応先輩だから、くだらない用事で呼び出すこと禁止」
そう言って、ゴミと化した空のカップを手に立ち上がる木田を、上目遣いで見つめてみるが…返ってきたのは、凍りつくような冷たい視線だけだった。



