「ご飯は皆で食べた方が美味しいでしょ?それに、しんやくんってすごく料理上手なのよ」
弥生に褒められたことで得意げになった慎也は嬉しそうに胸をそらす。
「なによ…調子に乗っちゃって」
参考書に視線を落としても、キッチンから聞こえてくる楽しげな会話が気になって、ちっとも頭に入ってこない。
シャープペンシルの芯を出しては引っ込めて、また出しては引っ込めてを繰り返している内に、出しすぎた芯がポッキリと折れてしまった。
すぐ近くにいるはずなのに、何故だか二人がとても遠くに感じる。
堪らずチラッと視線を上げて見れば、にっこり笑った弥生とバッチリ視線が絡み合った。
「さつきちゃん」
慌ててそらす間もなく、弥生の声がかかる。
「もし良かったら、手伝ってくれない?」
羨ましげな眼差しに気づかれたのかと思うと、皐月の心臓がドキッと脈打った。
「わたしちょっと手が離せないから、お味噌汁作って欲しいな」



