一人だけ、笑う人がいた。


雪を突き飛ばした男だ。



「はははははははははは」





その男は…。



「井上、先輩………」





そう、雪の元彼氏であり、澤木さんの元彼氏の、井上君だった。




「きゃああああああああああああああ!!」



通行人の女性の悲鳴で、私は我に返った。



「きゅ、救急車!」



林田は携帯を取り出し、救急車を呼ぶ。




「雪っ、雪!!」



私は、車に轢かれて血まみれの雪のもとへ駆け寄る。



「雪、雪しっかりして!雪っ!!!」




雪は、返事をしない。



「そんな、雪……!!」