「おめでとう」



「ありがとう、先生……?」



最初で最後に“先生”と呼んだ私に、翔希はクスッと笑って次の子の名前を呼ぶ。

滅多に笑わない、ホンマに表情筋を使おうとしない翔希の笑みにキュンとしながら席に戻る。



「おめでとう……」



「ん。サンキュー」



斜め前に座る陸と、たった一言を交わした。

あれ以来、2人して避けてたけど、最後だと思うと、言いたかったんだ。



「みんな、卒業おめでとう。くさい台詞を吐くようなキャラじゃねぇから照れるんやけど、ホンマに3年間、頑張ったな。教師になって、3年。共に成長するのが、お前たちで良かった」



「……っ……」



本当に、翔希らしくない台詞。

それは、私だけやなくて、みんなも知る事で、全員の心に響いた。



「湿っぽいのが苦手やから、最後に爆弾投下するわ」



…“爆弾”!?;;

何や、爆弾て!!;;

湿っぽいのは確かに嫌いやろう。

翔希に涙は似合わない。

しかし、この場に相応しくない発言に、クラス中から啜り泣く声が消えた。