お約束の長い校長と来賓の挨拶を聞き、送辞と答辞と続く。

寂しいけど、その何倍も待ち侘びた卒業式に、涙は特になく終了。

拍手の中、体育館を出る。



「何……?」



ドアの前で、母親に手渡された白い封筒。

返すに返さず、教室に戻る。

席に座り、封筒を開けると、私名義の貯金通帳と印鑑。

そして、保証人欄に母親の名前が記入された婚姻届。

私たちは記入を済ませており、保証人の1人は翔希のお父さん。

もう1人は、てっきり喜多見にでも頼むと思ってたのに……何で。



「愛李も寂しいんやん……っ」



泣きながらやって来た梢に抱き着き、号泣。

寂しいからじゃない。

封筒の裏に書かれた“おめでとう”の一言に、涙腺が崩壊したのだ。

啜り泣く声が響き渡る教室。

いつも通りのポーカーフェイスの翔希がやって来た。

代表者が受け取った卒業証書を、1人1人呼んで配られる。



「千葉愛李」



「はい……っ……」



今日でお別れの“千葉”の名が、ちょっと恋しく思いながら前に出て、証書を受け取った。