「んぅ……、誰か来る……っ!」



「喋んな。誘ったのはお前やろ」



「もっ……!!」



私たちしか居ない教室。

ラッシュ前の電車での通学を、未だに続ける私。

一番に出勤し、全教室の鍵を開ける当番だったらしい相田と会い、鍵を開けてくれた瞬間に掴んでしまった相田の腕。

確かに、せがんだのは私。

だけど、こんな予定ではなかった。



「ちょっ……!!」



「声出すな」



「ん――っ!?」



教卓に押し倒され、口を塞がれる。

首筋に這う相田の舌。

鎖骨に吸い付いた唇。



「……悪い。やり過ぎた」



しかし、急に解放され、襟元を直しながら首を振る。

何故、止めたのか。

だって、私が誘ったからキスに応じてくれたんやろ?

ここが教室だから?

それとも、他に理由があるの……?

チクリと痛んだ胸。

私は教卓から降りて、教室を出ようとした相田の紺色のカーディガンを掴んだ。

振り返った相田の頬に手を宛がい、背伸びしてキス。

リップノイズを起てながら唇を離す。



「どうした」



「何でかわからんけど、こうしな……もう、出来んようになるかと思って……」



私から仕向けなければ、相田は私に触れなくなるかも知れないと。