私に決まった人は居ない。

キスだけをする相田は居る。

だが、それだけ。

担任も生徒でしかない。



「…………」



事実なのに、心に吹き抜ける冷たい風。

…何なん、私……。

何でこんな気持ちに……?

母親を失っても、心が寒いなんて事なかったのに。



「愛李?そろそろお風呂入って来たら?」



「はい。じゃ、お先に。陽妃ちゃん一緒に入る?」



「うん!」



大人だけの時間にしようと、陽妃ちゃんを誘ってお風呂へと入る。

小さい子とは初めての入浴ながらも、赤ちゃんとではない為、案外、普通に入れた。



「陽妃ちゃんは、好きな子居るん?」



「パパ!でも、あーだもえーよね!」



舌が回らなかったようだけど、“相田”と言った陽妃ちゃんに苦笑い。

子供だろうと頷きにくい。

頷いてしまったら、私はより相田を意識してしまう筈。



「そっか。パパと相田か……」



見る目のある3才児。

ちょっとませてる陽妃ちゃん。

この子、喜多見の子供だけあって恐ろしいわ;;