いつもと変わらない我が家。

しかし、今日は違った。

モクモクと漂う味噌汁の香り。

喜多見の家で嗅いだ肉じゃがの匂いに包まれてる。

陽妃ちゃんのお絵かきを見守りつつ、キッチンに立つ愛陽さんの背中を盗み見る。

1時間後にやって来た喜多見と4人での食事。



「で、断ったん?」



「当たり前やろ。一度も受けた事ないやろ」



「受けたら“ユウヒ”が恐ろしいもんな?」



「お前のが恐ろしーわ」



生徒から告白された報告をする喜多見に、怪しい笑みを浮かべながら返事を返す愛陽さん。

信頼関係で成り立ってるであろう会話。

ただな?



「ユウヒさんて、誰ですか?」



「あれ?私、言わんかった?」



…言ってませんね。

愛陽さんが過去の話を聞かせてくれた時に聞いた名前は、親友の横山由香里-ヨコヤマユカリ-さんと、彼氏の米倉大和-ヨネクラヤマト-さんだけ。

あ、後は二度と会いたくないお兄さんが、歌手を辞めて俳優になった榛陽-ハルヒ-って位かな。

似てるっちゃ似てるけど、私は兄妹と言われても、メイクのせいもあり、ピンと来なかったけどね。