「もしもし。」


「悪い、食事中だった?」


「まあ、そうなんだけど。大丈夫だよ。」


「タイミング悪かったな。」


「何の用で電話なんかしてきたの?」


「あぁ、伊吹先輩と高梨先輩が別れたって噂が流れてるんだけど本当なのかなと。」


「えっ!?」


「お前、なんか知ってんの?」



「言い争ってるのを見た。だけど別れたなんてのはデマだよ。ケンカしてるのは本当だけど。」



僕の他にもあの場面を見た人がいたのかもしれない。



でも別れたなんてデマ流すのはヒドイ。



「別れてはないんだ。でも状況は悪いと。」



あからさまにトーンが下がる真司。


人が別れるのを喜ぶなんて不謹慎だよ、それが僕のためであっても。



「それって、真司なりのガンバレ?」


「おぉ、よくわかったな。」



「回りくどいんだよ。でも今の先輩につけ込むなんてこと僕はしないよ。」



「それが、お前らしいっちゃらしいかもな。
それを確かめたかっただけだから。食事中に悪かったな。じゃ、また明日。」




電話が切れる音がしたのを確認してこっちも切る。



そんな噂が流れてるなんて全然知らなかった。



でもデマだし高梨先輩の今日の態度をみる限り別れることは当分なさそう。



残りのご飯を食べ終えて部屋に戻っても考えるのは先輩のことばかり。



先輩が笑うのも泣くのも哀しむのも怒るのも全部高梨先輩のためなんだなって思い知らされた今日。




それでも僕は先輩を諦めきれません。




どうしたら先輩の心を奪えますか?