無糖バニラ

翼は何も答えず、あたしが傘に入るまでその場で立っていた。


「ありがとう……!」


あたしは嬉しくなって、翼に飛びかかるくらいの勢いで傘に入った。


「あんまり寄るな」

「濡れたくないんだもん」


翼は呆れたようにため息をついて、


「傘から出来るだけ顔出すなよ」

「なんで?」

「……濡れたくないんだろ」

「そっか」


そう言った翼の傘の持ち方はすごく極端で、顔の前方にばっかり傘を傾けるから、前が見えにくかった。