無糖バニラ

紺色の傘を開いて、自分の上でさす。

傘も、甘い香りがする。

あたしが普段使っている傘よりも、大きい。

大きいけど……、ふたりが入るには狭そう。

昔のあたしは、よく平気で翼の傘に入れさせてもらってたな……。


走っていると、足元で派手に雨水がはねる。


自分の息切れを聞きながら、頭の中で色んなものがぐるぐる回る。


小嶋くんの告白。

翼からのキス。


だけど、今はただ翼を追いかけることだけを考えたい。