無糖バニラ

ためらうことなく靴箱に向かう姿を見送る。

左手には、シンプルな紺色の傘。

「一緒に入れて」なんて、言えない。

絶対断るに決まってるし。

そして、顔を近づけたら、また何をされるか……。


「……」


……って、思い出すなってば……!

昨日あんなことをされたのに、何であたしは普通に声なんてかけてるの?
バカなの?


翼は、靴箱から外履き用のシューズを取り出し、上履きをしまう。


「……お前、傘ないの?」