無糖バニラ

「今さら遅いって感じだよな。ごめん……、朝からずっと渡そうと思ってて、タイミング失って、結局こんな時間に……」


小嶋くんは、言葉を紡ぐたびに顔が赤くなっていく。

つられて、あたしまで熱くなってくる。

そんな顔、しないで。

あたしは、断ることばかりを考えていたのに……。


「あ、賞味期限過ぎてないから!ポケットに入れてた、俺の非常食」

「非常食……、……ふふっ」


あ、笑っちゃった。

真剣な顔で、おもしろいこと言うから。


「ごめんなさい……」

「何で?内海の笑った顔、好きだよ」

「っ」


さらっとそんなことを言うから、言葉を失ってしまう。