無糖バニラ

あたしはまたすぐに顔を伏せた。

どうしよう。
どこを見ても、居心地が悪い。

あたしを好きだと言ってくれた人と、あたしにキスをした人が、隣同士で話をしている。

どんな状況なの、これは。


雑誌を見るでもなく、ただ下を向くだけのあたしを、仁奈が不思議そうに覗き込んだ。


「どした?このは。なんか今日おかしいよ」

「え、あ……、あのね……」


顔を上げて、口を開いたけど、言葉を喉元で止めた。


「……ごめんね、なんでもない。朝ごはん食べなかったからお腹減っちゃって……」

「もー、なにそれー」


笑う仁奈を見ながら、あたしも笑みを作る。


小嶋くんからの告白を、話してしまいそうになった。

だめ。
真剣に伝えてくれた気持ちを、簡単に人に言うなんていけない。


だったら、あたしは、どうしたいんだろう……。