無糖バニラ

「普通、離れたがるだろ。俺のそばにいたら……」

「離れたのは、翼のほうでしょ」

「……」


翼は、つかんだ腕をしばらく見てから、離した。

何も言わず、くるっと方向転換。

またひとりでスタスタ歩いていった。


「翼、待って!一緒に」

「ついてくんな」

「っ」


追いかけたくて駆け出しそうになっていた足が、その一言で怖気づいて止まる。

近づいたり、離れたり、……翼は今日も冷たい。

キスしたくせに。