フッと頭の上が陰って、顔を上げた。

頬を大きな手が包んで、近づくバニラの香り。


「――っ」


声が出ない。

唇が、塞がれて。

翼の顔が近すぎて、よく見えない。


――血の流れが、全て止まってしまったのかと思った。


唇が離れて、目を見開き、やっと出せた言葉は、1文字だけだった。


「……え?」


翼の顔が近づいて、唇にやわらかな……。

あたし、これ知ってる。