無糖バニラ



「いらっしゃいませ~」


午前中のみの夏期講習を終えて、あたしは今、隣の家で店番をしている。

一緒に帰ってきた翼は、厨房の方で手伝い。


ひとりだけいるお客さんの目を盗み、自分が付けているエプロンをつまんで見る。

中学の時から借りていた、シンプルだけど可愛いもの。

頭に過(よ)ぎるのは、朝に翼に見せられた肩紐から下の方までフリルたっぷりのエプロン。

ちょっと……もったいなかったかな。


「すみません、注文いいですか?」

「っ!はい」


目の前にお客さんがいて、ハッと現実に戻る。

ケーキを箱に収めて、レジを打ち、帰りを見送った。

ふぅ、と一息つくと、厨房からの扉がガチャッと開いた。


「このは、これ追加分」

「はーい」


翼に、カゴに入った焼き菓子を渡され、空いていたスペースに置く。

マドレーヌと、紅茶クッキー。