無糖バニラ

息が苦しい。

胸が苦しい。

翼でいっぱいで、破裂しそう。


やっと解放された時には体中に力が入らなくて、翼に支えてもらってやっと立っていられる状態だった。


周りの音なんて何も耳に入っていなかったのに、今さらこの場所が駅のそばだということを思い出した。


「だめって……言ったのに……」

「だったら、ちゃんと嫌がれよ。俺の前で、あんな顔すんな」


好きな人からキスをされて、嫌がるなんて器用な真似は出来そうにない。

あんな翼、知らない。

燃えそうなくらい熱い唇が、今のが嘘じゃなかったことを証明している。


「俺は謝らない」

「ばか……、帰る……」


何を言っても、翼はあたしの手を離さない。

そして、ギュッと強く抱き締め、耳元で囁いた。


「帰さない」