無糖バニラ

翼も緊張の糸が切れたのか、脱力したのか、ガックリと頭を落としている。


「そうなんだー、ごめんね。今日は朝礼が長引いちゃってさ。怪我したところ、どこ?」


先生が近づいてきて、翼は自然な流れで席を立った。


「やだ、痛そう。ちょっと腫れてきてるね。どうしたの?ケンカ?」

「いや、あのー……、階段から落ちて……」

「階段?」


自分でも思う。
言い訳がベタすぎて、こんなの嘘以外の何物でもない。

階段から落ちて、頬だけ打った。
うん。あるある。

……ないな。


目をそらすあたしに、明らかな疑いの目を向ける先生。

何も聞かないでほしいという意思が伝わったのか、ため息をついて立ち上がった。


「分かった。階段から落ちたのね。待ってて、保冷剤持ってくるね。言いたくなったらいつでも話聞くから」