「嫌いなんて、言ったことないだろ」


ずっと目を開いていたのに、何が起こったか理解できなかった。


気付いたら、涙は止まっていた。


あの後、どうやって帰ったのかわからない。

自室のベッドの上で、枕を抱きしめていたら、いつの間にか窓の外から光が届かなくなっていた。


名前を呼ばれた。

あれは……翼?

うん、だって、そばにいたのは翼だけで。

それで……。

唇に指を当てる。

こんなんじゃない。
もっと柔らかかった。


翼の唇は、もっと。


「……っー!」


枕を抱きしめたまま、声にならない叫びでジタバタする。

どうしよう。
またキス……した。

どうしよう。

あたしは、小嶋くんの彼女なのに。