「もう、どうしたの?早く仲直り……、ええっ!?」


あたしの叫び声は、厨房まで聞こえてしまったのだろう。

翼ママが怪訝(けげん)そうな面持ちで様子を見に来た。

そして、あたしの涙を見て驚いたあと、翼を睨んだ。


「こら、翼!あんた、泣かすなんて」

「違う、翼のせいじゃない……っ!」


反論をしようと、ますます涙をこぼすと、翼の大きな手が涙を隠すように顔を覆(おお)った。


「ごめん、母さん。こいつ送ってくる」


翼ママの返事を聞かず、翼はあたしを引っ張ってお店を出た。


「翼の……せいじゃないもん、バカ……っ」


だだっ子のように、翼の服をつかんでこぼれる涙を手の甲で拭う。

もう、絶対明日から半袖着ていく。

こんな傷、翼以外に言われることなんか何も気にならないんだから。