無糖バニラ

「あれって、売り物じゃないの?昔からあるのに……。こないだも、翼にもらったばっかりで」

「このはちゃん知らなかったっけ?バニラクッキーだけは、翼が作ってるって」


……。

しばらくその場で止まって、グラスの中で氷がカランと溶けてぶつかった音で、ハッと瞬きをひとつ。


「……え?」

「あらっ、本当に知らなかったの。なんで今まで翼言わなかったのかな。このはちゃん、好きなんでしょ?翼のバニラクッキー。だから昔から作ってるんだけど」


なんで?

どういうこと?

翼からは、一度もそんなことを聞いたことがなかった。

そう言われてみれば、他の売り物のクッキーとは違って、バニラクッキーだけはいつも形がデコボコで。

あれは、初めて翼と一緒に作ったクッキーとそっくりだったんだ。