仁奈の言葉に一度うつむくけれど、すぐに目を合わせた。

ごまかせない。


「好きだよ、翼のこと」

「だったらさぁ……」

「でも、小嶋くんのこと、好きになれると思う。あんなに何回も告白してくれる人、他にいないし……」


本当の理由は、仁奈にも言えない。

この関係が、付き合っているフリだということも。

翼に嫌われたくなくて、小嶋くんを利用して彼女になった。

あたし、嘘ついてばっかりだ。
最低。


仁奈は、むうっと唇をとがらせて、あたしの頬をつねった。


「ふーん、分かった。このはって、芦沢くんのこと諦めるんだ」


そして、ひとりで屋上の扉に向かって、振り返った。


「誰かのものになってもいいってことだよね?じゃー、あたしが取っちゃおっかな」