無糖バニラ

「やめろ!」

「離して、翼くん!」


ふたりが言い争いながらもみあって、翼は本田さんのカッターを必死に奪う。

あ……、翼まで手に怪我をしてしまう。

だめ……!


「このは!大丈夫か!」

「翼……、手……カッター離して……。血出てるよ……」


痛い。熱い。

表情が歪んで、上手く目を開けていられない。


「バカ!俺の心配すんな!」

「そんなの無理だよ……」


本田さんが、口に手を当てて、恐怖に戰(おのの)いているように見える。

腰を抜かして、ぺたんと地面に尻餅をついた。


「このは……っ、待ってろ、今救急車……」


翼があたしの肩をしっかり抱いて、支えてくれている。

あたしのバカなところは、こんな状況で嬉しくなってしまうところ。


――あの日からだった。

翼が女嫌いになったのは。