無糖バニラ

思いつめた瞳。

ブルブルと震える手。

握られたのは、カッターナイフ。


確認できたのは一瞬で、そこからは早かった。


「あんたがいるから、翼くんが!消えてよ!」

「このは!」


本田さんがこちらに向かって駆け出したのと、翼が叫んだのは同時だった。


「い……った……」


腕を切り裂くような、熱さ。

とっさに押さえた左腕からは、真っ赤な血が止まらない。

そっか、これって熱いんじゃなくて痛いんだ。

血の温度は体温と同じ。
この目で見るまで、流れていることに気づかなかった。

そんなことを、妙に冷静に考える。