本当は、学校を休みたかった。

翼とあんなことがあったばかりで、何事も無かったかのようにいつも通りを演じて過ごすなんて自信がなかったから。

でも、家にはママがいるし。

サボりなんて、100%怒られる。

それに、ひとりきりで部屋にいる方が考え込んでしまいそう。


「今日ね、芦沢くん休みなんだって」


仁奈が口にするその名前に、心臓がドキッと跳ねる。


「そ、そうなんだー……。どうりで休み時間なのに他のクラスの女子が集まってないと思ったよー……」


見事なまでの秒読みに、仁奈が疑いの眼を向ける。


「あのさ、このは、実はちょっと大変なことになってんだけど」

「大変なこと?」