無糖バニラ


*

あれが現実に起きたことだったのか、あたしはまだ翼に聞く勇気がない。


夢だったのかな……。

あんなに鮮明に覚えているのに。

甘い香りのキスを。


確かなことは、あれ以来翼があたしを「このは」と呼ぶことはなくなった。

毎日のように一緒にいたのに、目も合わせてくれない。


そして、あたしは腕を隠すようになった。

シャツの上から、腕をさする。


なんで謝ったの。

……翼のばか。