「もうそんな話になってるんですか??」


周りも驚く。


「だから違うってば」


「照れるな照れるな。もう諦めろ」


「触んないでよ!!もう」


ふと、助手席の男に目がいく樹荏。オールバックでサングラスの黒いスーツの男だ。


「あれっ!?何してるんですか?守村センセー」


「あ、見つかった」


「えっ!?守村先生って、入院中なんじゃあ…」


樹荏が、しまったという顔をして振り向いた。


そういう話になっている以上、こういう形で見つかるのはまずいだろう。


「スモークガラスやし、変装してるし、見つかれへんて言うてたのに」


「いや、俺のせいか??」


樹荏がちょっと拗ねる。


「あ~、入院してたのはホンマやで。思ったより早く退院できて、今日は様子見で付いてきただけや。学校には連絡したから」


ニヤニヤしながら、


「残念ながら、櫻とはお別れや。帰って親父さんの仕事、手伝わんとな」


「……わかってるわ、そんなこと」


「入院ついでに茶目っ気で、きっかけ作ったった恩を忘れるなよ」


「えっ!?先生が!?」


「そうそう、俺が教えた護身術も役に立ったみたいやし」