――月曜、夕方。


諏訪の一件を、加織たちはうずうずしながら触れられずにいた。


少なくとも樹荏を見る目は代わった。


咲希はバス通学になり、樹荏と同じになった。


そしてその日。


グラウンドの脇に、一台の黒塗りのベンツが止まる。なにわナンバーのゾロ目だった。


「なにあの車??」


「何かいかつい…」


部員が口々に。


「何しに来たんや親父!!目立ってしゃあないやんけ!!」


慌てて樹荏が車に駆け寄る。


「えっ!?」


「お父さん!?」


生徒が驚く。


運転席のパワーウィンドウが開き、角刈りでサングラスに黒いスーツの中年男が顔を出す。


車に乗った状態でも立派な体格は窺えた。


「怒んなや!!ニュースで見て、心配で様子見に来たんやないか!学校の皆さんに迷惑掛けてへんか??」


「め、迷惑なんか掛けてへんわ!!」


「お、おとうさん???」


咲希の声に反応する父。


「おや、そちらが例の…」


「ああ、俺の嫁にする子や」


「なりませんてば」


「家にも挨拶行ったし、問題ないで」


「さすがワシの息子!!仕事が早い」


聞いてないし。