最寄りの一番大きな駅前で、ファミレスはここしかない。


見渡すと、入り口のセンサーチャイムで気付いた樹荏が立ち上がって手を振る。


「おーい、こっち…や??」


目が合うと、樹荏が固まった。


白いシャツに花柄のスカート。
髪を巻いてハーフアップにしていた。


「……やばい、200%持ってかれた」


口を押さえ、耳まで赤くなる。


と、


「あれ??コーチ、偶然ですね」


わざとらしく気付いた振り。
樹荏の顔色が変わる。


「どうしたの??」


後ろから、鳴瀬が現れた。


無造作にセットした髪。半袖の羽織シャツにデニムと爽やかな服装だ。


「……お前、……なんで??」


加織の提案だった。
いっそ、デートを見せつければ諦めるかもしれないし、彼女騒動の仕返しにと。


少しやり過ぎな気もしたが。