「もしかして俺の名前知らなかったとか」
「今覚えた、荻野」
「名前知らない奴によく物貸せたな。羊佑で良いよ」
「羊佑」
なんでも、ようすけのヨウは羊だとか。そう言われると羊っぽく見えてくる。特に深い意味はない。
「はい」
「君さ、天川先生のこと好きなの?」
あ、と思った。本日二度目。
あたしにしては軽率だった。こんなに口からぺろっと出てしまうとは思わなかった。
きっと羊佑が話しやすい人間だったからに違いない。なんて、人の所為にしてみる。
まあ勿論、羊佑は顔を強張らせていた。
あー、とマオは一人で勝手に頷く。全くあたしには何も伝わっていない。



