そうか、だからむかついたのか。天川先生に向けた一途な気持ちが羨ましかった。あたしの中にはない感情だったから。
あたしには知り得ない感情だったから。
「本当?」
「はい?」
「それ、本当?」
首を傾げて聞く御梶間先生の意図が分からない。途端、「もういい!」と斜め向かいの奥の席に座っていた女性が立ち上がった。
あたしたちの周りの席だけ一瞬静かになる。少し遠くなると全く聞こえないようで、雑音が途絶えることはなかった。
男は何も言わずに俯いている。あたしから表情は見えず、そこの不穏な空気だけは読み取れた。
不吉な予言が当たってしまった。
「ほらね」
肩を竦める。この人はたまに、心理カウンセラーとしてではなくて占いとかした方が良いんじゃないかと思う。



