お母さんには「塾に行く」と言って出ていったらしい。
サボりか将又息抜きか。あたしには想像もつかないけれど、玻璃は何かを考えながら品物を吟味している。
「玻璃」
びく、と肩が揺れる。不安げな顔がこちらを向いた。
あたしの声はお母さんの声に似ているとよく言われる。
「なんだ、お姉ちゃんか」
ほっと安堵のため息をする玻璃。持っていた青のハンカチを棚に戻した。女子にあげるには、地味なような。
「彼氏にでもあげるの?」
「彼氏ほしい」
「じゃあ誰にあげるのよ」
「どうやって彼氏って作るのかな」
どうやら誤魔化したいらしい玻璃は話題を逸らそうとする。お父さんの誕生日はまだ先だし、同級生にあげるには大人っぽいような。



