マオのことをマオと呼んでいなかったその頃、あたしは「君の夢をみた」と白状した。
「僕に襲われでもした?」と冗談のように返される。ああ、意味が違う。
「違う。"君がみた"夢をみたの」
顔が強張る。それから、マオはあたしの隣にしゃがんだ。次の時間の授業はとっくにはじまっている。
「それ、本当?」
「信じなくてもいい」
「いや、信じる」
躊躇いのない返答にこちらがたじろぐ。
マオは人懐こい笑顔を見せた。こういう顔もするのか、と何故か安堵する。
「僕は今生きてるから」
土曜日、妹が雑貨屋を彷徨いているのを見た。



