変に気遣うな。
帰り道、駅までゆっくりと歩く速度。マオとは違う距離感。ふわりと香る甘ったるい花の香り。
春の夜の噎せ返るくらいのそれは、私の肺をぐずぐずと腐らせる。血は身体を巡ってすぐに立てなくなる。致死量を超えた甘い匂いは、猛毒だ。
やっぱり、と思った。あたしは心を読めるわけではないけれど。
「楽しい?」
先生とはコンビニで別れた。軽自動車に乗って軽やかに去って行くのを見送って、あたしと羊佑は帰路についた。
「……もしかして神津って国語の偏差値低い?」
「普通」
「話がたまに支離滅裂になるし、文脈が掴めない」
「そういう病気なんじゃない?」
え、と声に出さなくても分かる顔をした。どこからか焼き魚の匂いがする。



