ぎいい、と古い引き戸が音を立てて開かれる。
「遅れてごめんね、捗ってる?」
天川先生が現れた。あたしはしゃがんでバケツに沈めた雑巾を絞る。
「こっちの隅はなんとか。これ全部やるんすか?」
羊佑が立ち上がりながら尋ねる。
先生がその隣に並んで、揃った資料の束を見て感動したみたいに目を見開いた。
「これ探してたのよ、どこにあったの?」
「いろんなところから出てきましたよ」
「良かった、二人には報酬を支払わないと」
「先生、俺アイスが良い」
二人の会話を聞く。不思議というか、なんというか。
夢の中にいるみたいな。
「神津は何が良い?」
羊佑がこちらを向く気配がした。



