苦笑しながら答える。窓を開けたことによって更に埃が舞っていく。上方の窓の外に見える外はオレンジに染まっていた。
「神津って最初に話した時から言葉の節々に棘を感じる」
「周りに毒舌がいるから、移ったのかも」
「あれか、小塚」
まさか知っているとは思わなくて驚く。雑巾をバケツに入れて、羊佑の方を向いた。
「マオ知ってんの?」
小説を棚に入れている羊佑はこちらを見た。言葉にしなくても分かるような、怪訝な顔。
「マオって名前だっけ?」
「あたしがマオって呼んでるだけ」
本名とは全く関係がないので、マオを本名で呼ぶ人には気付かれない。でも、一部女子にマオと呼ばれているのを聞いたことがあるような。



