睨む。否、視線をやる。
この埃付きの雑巾を投げつけてやろうか。

「ねえ、天川先生は?」

「生徒の質問答えてから来るらしい」

しれっと言うので、あたしは近くのパイプ椅子に座って近くの棚を拭いた。どうしてこんな事に巻き込まれたのか。

羊佑は図書館の準備室内に積み上がっていた資料と本を並べている。夏目漱石、太宰治、井伏鱒二。

「『昨日の今日で、よくこいつ誘えたな』とか思ってる?」

羊佑が急にテーブルに乗り始めて上方にある窓を開けた。地下だから、その窓は地上の地面すれすれのところにある。

「目的の為なら手段を選ばないところは良いと思ってる」

「うわ、神津ならそう言うと思った」