HRは先に終わっているから教室へ急ぐ必要はない。行くよー、とマオから声がかかって、あたしは窓から離れた。 「青春だ」 「あたしとは程遠い」 人それぞれ、見ている世界は違う。 ふわ、と埃が舞った。 濡れた雑巾でそれを捕まえて、一緒に棚の上も拭いてしまう。けほけほと渇いた咳が聞こえた。 「五巻だけないんだけど、そっちある?」 「ない」 「おい、神津さん。ちゃんとやってもらえます?」 また咳をする羊佑。